Gold Plum

第六章


対峙


〜善郎＆太一の場合〜


四


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「それだけじゃないぜ」


　太一が邦夫の話に瞳を輝かせていると、里夫が割り込んできた。

湯呑を乗せた盆を持ちながら里夫はどこか自慢げに胸を反らす。


「じいちゃんはその中でもすごいレスキュー隊員だったんだぜ。

なっ！　じいちゃん」

（レスキュー隊員なんてすごい！

ムササビの姿になれるからレスキュー隊員になれたのかな？）


　人型の邦夫はずんぐりとした体格だが、獣型のときは里夫のように

俊敏な動きができるのだろう。

太一がそんなことを考えていると邦夫が高らかに笑い出す。


「はっはっは。今のわしの姿からは想像できんのも無理はないべ」


　これでも昔はイケメンマッチョだったべ、と邦夫が腹の肉を

掴んで揺らした。


（イケメンマッチョ……全然見えないや）


　太一が目を見開いたまま呆けていると、善郎が感嘆の声をあげる。


「さすが邦夫さんですな」

「だろう！　じいちゃんはすごいんだぜ」


　里夫が自分のことように喜びながら、湯呑を各々の前へ置いた。

ゆらゆらと湯気が立ち上る。太一がそれをなんとなしに見つめていると、

湯気の向こう側にいる邦夫が照れくさそうに鼻の頭を引っ掻く。


「昔ことだべ」


　その姿は里夫にとてもよく似ていた。