Gold Plum
第六章
対峙
〜みのり&涼介の場合〜
一
IIIH
「兄さん……。ったく、何考えてんだよ!」
(涼介……)
悔しそうに唇を噛みしめる青年の姿に
みのりはかける言葉が見つからず、黙り込んだ。
そこへ車の速度をそのままに、飛田が声を震わせながらも状況説明を
求めてきた。
「へ? へ? なんなんですか?!」
「鹿さん、大丈夫。問題ない」
「も、ももももも問題ないって言われても……!」
平然と返す紅とは逆に、飛田は声を上擦らせ喚く。
彼の頭上からは大きな角が現れ始めていた。
(この角どこまで伸びるのかしら?)
天上をこすりつける飛田の角に現状を一瞬忘れ、
あっ気に取られていると、碧がふむ、小さく鼻を鳴らした。
「どうやら涼介君のお兄さんは僕たちの邪魔がしたいようですね」
碧の推論に、涼介が自身の太ももを殴りつける。
「くそ!」
悲痛そうに顔をしかめる涼介の表情に、みのりは胸が痛くなった。
太ももの上で震える彼の拳に手を重ね、
大丈夫だからと言ってあげたい。だが、涼介との間に座る
紅という存在が物理的にも心情的にもそれを許さなかった。
(涼介だって私なんかより紅に慰められる方が嬉しいわよね)
みのりが自虐的になりながら彼から視線をずらす。
刹那、背後から衝撃が走った。
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