Gold Plum
第六章
対峙
〜みのり&涼介の場合〜
五
B
(どうしよう涼介の顔が見られないわ)
彼と目が合おうものなら確実に顔が赤くなる。それだけなら
まだしも、きっと挙動もおかしくなるに違いない。
そうなれば敏い側近たちのことだ。昨夜何があったか、すぐに
察してしまうだろう。
(今は黄金梅を実らすことだけに集中しないと)
涼介だって告白の返事はすべてが終わってからでいいと言って
くれた。彼の気遣いに報いるべく、みのりは小さく深呼吸を繰り
返す。
「高松」
「ああ」
市長の呼び声に高松が返事をした。目配せを交わし、
話は終わったと言わんばかりに2人は用意されていた車に乗り込む。
2人の姿が車に消えるや否や、今まで一言もしゃべらなかった
碧が口を開く。
「雅仲君、僕たちの車はどこにあるのですか?」
「え? あの車に乗るんじゃないの?」
みのりは市長と高松の乗った車を見た。自分たちが乗車すると
思っているのだろう。ドアは未だに開きっぱなしになっている。
「お嬢様、恐れ多くも市長と都の人間が乗っている車ですよ。
同乗するなんてとんでもない。僕らは別の車に乗らないと」
碧が首を緩やかに振りたしなめてくる。言い方は丁寧だが、
みのりには嫌味にしか聞こえなかった。
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