Gold Plum





第六章


対峙


〜みのり&涼介の場合〜





C




(一緒の車で行きたくないからってあんな遠まわしに言わないと

いけないものなのかしらねぇ?)


 だが碧の考えはもっともだ。市長がいる前で襲撃されるとは

思わないが、これまでに数々の妨害をしてきた人間たちと同じ

車には乗りたくない。みのりは、雅仲を見る。


「あ、ええっと……。我が家のを使ってください」


 雅仲が頬を引っ掻きながら、ポケットへ手を入れた。

碧の要求を予測していたのだろうか。車の鍵を取り出し、碧へ

手渡した。そこへ涼介が頭を下げる。


「すみません。碧さん……」

「君が謝ることでないですよ。涼介君」

「いいんですか? ありがとうございます」


 すでに鍵を受け取っている時点で確認するのもどうかと

思ったが、みのりは形ばかりの言葉を雅仲へ送った。


「いえいえ。こちらこそ兄と弟がご迷惑おかけしてますから。

これくらいのことしかできませんがどうぞ表の車をお使いください」


 雅仲と会話しながらも、みのりは隣に立つ涼介に意識が向く。

触れられているわけでもないのに、涼介の体温が身体半分に

伝わってくるようだ。ドキドキしていると、おもむろに紅が

涼介との間に身体を割り込ませてくる。


「そんなに近くないと思うけどなあ……」


 紅が何か言ったのだろうか。涼介から不満気な声が聞こえてきた。

しかし問い返そうする前に、紅に手を握られる。


「お嬢さま、行こ」

「え、えぇ。あの雅仲さん、

昨日はお宅に泊めていただきありがとうございました」


 みのりは、グイグイと引っ張る紅を宥めながら雅仲へ礼を告げた。










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