Gold Plum





第六章


対峙


〜みのり&涼介の場合〜





I@




「快く9時に橋へ向かうと言ってくださいましたよ」


 良かった。気づいていないようだ。碧が梅田のみの返答だけを

告げた。みのりは胸をなでおろす。だが、それもつかの間。

碧がミラー越しに、にやりと人の悪い笑みを浮かべる。


「ところでお嬢様、お顔が赤いようです」

「へ? そ、そう? ちょっと日差しがキツイのかしらね?

なんだか暑いような気がするわ」


 みのりは側近からの指摘に頓狂な声をあげた。そして右手で顔を

扇ぐ。しかし、熱が引く気配はなかった。左手も使い、交互に手を

振っていると紅が心配げにおでこを触ってくる。


「熱?」


 みのりは顔を左右に振りながら、紅の手をおろさせた。


「だ、大丈夫よ、紅。ありがとう」


 紅が、真意を確かめるかのようにじっと見つめてくる。

みのりは居た堪れなくなり、空笑いをしながら目線を逸らした。


(そういえば涼介の好きな人が紅じゃないのはわかったけど、

紅は涼介のことが好きなのよね……)


 高揚していた気分が一気に沈む。

悲しげに眉を下げた紅の顔に瞳を潤ませた顔が重なり、胸が痛んだ。










一つ前を読む   GPの部屋に戻る   次を読む