Gold Plum
第六章
対峙
〜みのり&涼介の場合〜
五
I@
「快く9時に橋へ向かうと言ってくださいましたよ」
良かった。気づいていないようだ。碧が梅田のみの返答だけを
告げた。みのりは胸をなでおろす。だが、それもつかの間。
碧がミラー越しに、にやりと人の悪い笑みを浮かべる。
「ところでお嬢様、お顔が赤いようです」
「へ? そ、そう? ちょっと日差しがキツイのかしらね?
なんだか暑いような気がするわ」
みのりは側近からの指摘に頓狂な声をあげた。そして右手で顔を
扇ぐ。しかし、熱が引く気配はなかった。左手も使い、交互に手を
振っていると紅が心配げにおでこを触ってくる。
「熱?」
みのりは顔を左右に振りながら、紅の手をおろさせた。
「だ、大丈夫よ、紅。ありがとう」
紅が、真意を確かめるかのようにじっと見つめてくる。
みのりは居た堪れなくなり、空笑いをしながら目線を逸らした。
(そういえば涼介の好きな人が紅じゃないのはわかったけど、
紅は涼介のことが好きなのよね……)
高揚していた気分が一気に沈む。
悲しげに眉を下げた紅の顔に瞳を潤ませた顔が重なり、胸が痛んだ。
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