Gold Plum
第六章
対峙
〜みのり&涼介の場合〜
一
IIII@
「わー! とりあえず落ちついてください! 飛田さん!」
「鹿さん、落ち着いて」
涼介と紅がなんとか飛田を宥めすかそうと声をかける。
だがそれは悪手だったみたいだ。
「落ちつく! 落ちつくー!」
飛田が彼らの言葉を繰り返す。だが、明らかに動転していた。
ついにはハンドルから手を離し、頭を抱えてしまう。
両側面に挟み込むように車が近づいてくるのが見えた。
「ふむ。飛田さん運転代わりましょう!」
言うや否や碧が飛田の襟首を掴んだ。
「わー!」
ショック療法だろうか。あれだけ伸びていた角が一瞬にして
消えてなくなる。碧は飛田を運転席から助手席へと移動させると、
碧自身が運転席へ座った。
(何今の? どうやったの?)
飛田は普通の人よりも華奢なのかもしれないが、
それでも大人の男性だ。それを碧はいとも簡単に持ち上げた。
それだけならいざ知らず。あの狭い空間の中で、
瞬時に2人の位置を交換させたみたいだ。
(碧って手品師でも生きていけるんじゃない……)
みのりは、イリュージョンのような出来事にまばたきを繰り返した。
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