Gold Plum





第六章


対峙


〜みのり&涼介の場合〜





IIIIC




「たぬきたちも、ここでは発砲できないでしょう」


 碧の言葉に涼介は安堵する。

だが、まだ完全に逃げ切れたわけではないらしい。

その証拠に、黒塗りの車はぴったりとついてきている。

あいつらをどうにかしない限り、目的地に着くのは難しそうだ。

涼介は前方の碧へ尋ねる。


「このまま俺の家へ行く前にあいつらを撒けそうですか?」

「どうでしょうね。できる限りやってはみますが……信号機がありますからね」


 慎重な碧の返答を受け、みのりが口を開く。


「飛田さん申し訳ありません。

私が山波さんに無理やり手伝いを頼んだばっかりに……」


 沈痛気なみのりの謝罪に飛田が言葉を詰まらせた。


「うー……いえ……」


 小さく唸り吐息する飛田を見ながら、涼介は逡巡する。

逃げ切ることができないそうにない。何か他の方法を……。


「なら、いっそのことついてきてもらうっていうのはどうですか?」


どうにか案を捻り出すと、碧が小さく首を傾けた。


「ふむ、それはなぜでしょう?」


 問いかけてくる碧へ涼介は言葉を紡ぐ。


「兄のことだから、おとなしく山波さんと引き合わせてくれるとは限らない。

それどころかのらりくらりと躱される可能性もある。

でも、あいつらがついてくれば、少なくとも家の中へ入れないわけには

いかないんじゃないかと思うんです」


 あれが本当に雅秋の放った追手なのだとしたら、だが。

説明を終えて口を閉ざすと、碧の代わりにみのりが声をあげた。


「無事に市長のところへつけるならなんでもいいわ」


 溜め息を吐くみのりの前方で、碧がくすりと笑む。


「なるほど。涼介君はお兄さんのことがよくわかっていますね」


「あー昔からいろいろあったので……。

よかった。ありがとうございます、みのりさん、碧さん」


 賛成してくれたことに礼を言い終わると同時に、

獣人たちの乗る車が目前まで迫ってきた。


「うわー!」


 飛田が再び頭を抱える。鳴り響くクラクションに苛立ちが募ったのだろう。

一般車も同じようにクラクションを鳴らし始めた。










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