Gold Plum
第六章
対峙
〜みのり&涼介の場合〜
五
DID
「もちろんです!」
麻里が意味もなく胸を叩く。
一瞬、盃から梅の果汁がこぼれないかどうか心配なったが、
杞憂に終わった。
「うん! ちゃんと前と一緒の願いを唱えるよ」
隣にいた太一が元気よく答える。
少年にとっては祖母の願いが叶うかもしれない正念場だ。
(花がちゃんと咲いてくれるといいな)
黄金梅がなくなってしまうのか、それとも残るのか。
自分にとっても他人事ではない。
だが、どんなことになっても自分はみのりの側にいよう。
気持ちを新たにしていると、太一のさらに横で山波が背筋を伸ばす。
「はい!」
「もちろんです」
次いで答えたのは野木崎で、彼女の表情にも一切の迷いは見られなかった。
みのりが全員を見回す。それからゆっくりと口火を切った。
「では……」
言葉と同時に盃を口元へ運びかけた時だ。
「待ちなさい!」
女性の一際厳しい声音が耳をつんざく。
「え……?!」
聞き覚えのある声に反応して、涼介は声のした方角へ目を向けた。
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