Gold Plum





第六章


対峙


〜みのり&涼介の場合〜





IIIID




(この音って救急車だったかしら? それとも消防車?)


 徐々に大きくなるサイレンの音に、みのりは窓へ額を押しつけ

外へ目線をやる。対向車のライトが次々に通りすぎて行った。


(こんな時に緊急車両に出くわすなんて……)


 みのりは眩しさに目を細めながら、後ろを見る。

先ほどのクラクションが効いたのか、狸たちを乗せた車は一定の距離を

保って後ろについていた。そのさらに後方から、サイレンの発生源が

赤いランプを明滅させながら近づいてくる。車体を黒と白に染めた車を

視界に捉えると同時に、飛田の喚き声が車内に響いた。


「ぱ、パトカー?!」

(やだ、パトカーじゃない!)


 自分の思い込みに身体が熱くなる。


(え、待って。もしかしてあのパトカー私たちを追ってきているの?)


 上昇していた熱が一気にさがっていくのがわかった。


「誰よパトカーなんて呼んだの!」


 みのりは身体の向きを戻し、八つ当たり気味に叫ぶ。

だが碧はいつもとまったく変わらない声音で返してきた。


「おやおや困りましたねー」

「警察まで出てくるなんて!」


 涼介が声を荒げながら自身の手を殴りつける。

サイレンの音がすぐ近くまできていた。

焦りばかりが募り、何も打開策が出てこない。


(こんなところで諦めたくなんてない)


 必死で思考を巡らせていると、

紅が小さく、だがハッキリとした声で呟いた。










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