Gold Plum





第六章


対峙


〜みのり&涼介の場合〜





I@




 本当にその通りだ。

獣人たちだってこの街であらゆる仕事に就いている。

彼らがいなければこの黄梅市は成り立たないだろう。

今一度言って聞かせようと口を開きかける。

だが、その言葉は美都子の言葉に遮られた。


「獣人が優しいなどと思うのは、

彼らを管理しているからこそ感じることができるのですよ」


 美都子の発言を聞き唸ったのは山波だった。

薄くなった頭を掻きながら、山波が口火を切る。


「耳の痛い話ではありますが、美都子様。

あなたはわたくし同様間違っていると言わざるをえませんな」


 はっきりと言い切る山波に誰もが目を見開いた。


(山波さん……)


 まさかそこまで全否定するとは。涼介は驚きに目をしばたたく。

人は変われると言ったのは自分たちだが、180度主張が

変わるとは思わなかった。


(野伏間さんってすごい人なんだな)


 自分たちだけでは決して成し得なかっただろう。

胸の内で獣人の老人に感謝していると、後方で愉快げな声が響いてきた。


「へえ、結構責められまくってるね。ご当主様は」


 軽く嘲っているようにも聞こえる。

確かに一族ではあるのだろうが、彼に怖いものはないのだろうか。


(第一こんなことで折れてくれる美都様でもないだろうし……)


 心中で溜め息を吐いていると、代わりに雅秋が高松へ進言する。


「そうとも言えんぞ」


 長兄の言葉に大きく頷きながら美都子を見遣る。

彼女は腕を組んだまま、微動だにしていなかった。










一つ前を読む   GPの部屋に戻る   次を読む