Gold Plum





第六章


対峙


〜みのり&涼介の場合〜





AIE




 涼介の怒号に市長が一瞬目を瞠った。しかし、すぐに平静さを

取り戻したのだろう。淡々とした口調で応じる。


「俺は知らない。だが、気持ちはわからんでもない」

「あなたたちは、この後に及んで!」


 涼介が強くこぶしを握った。小刻みに揺れるその手に彼が

どれほど憤っているのかが伝わってくる。

 みのりは、傷ついているであろう涼介の心を思うと胸が

痛くなった。

 昨日涼介は、長年隠していた本音を長兄である市長へ打ち明けた。

市長もそれに応えたはずだ。


(それなのに土壇場になって邪魔をしてくるなんて……

信じられない)


 みのりは市長を睨みつけた。しかし彼はこちらの視線には

気づいていないらしい。


「まあ、そういきり立つな。事なきを得たんだ。許せ」


 涼介を宥めるように市長が謝罪を口にした。だがあまりにも

おざなりな言い方に、涼介の瞳はさらに吊りあがる。


「何を!」

(事なきを得たって涼介のお手柄であって、市長は何も

していないじゃない!)


 みのりは近づいてくる市長へ文句を言おうとつま先へ力を入れた。










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