Gold Plum





第六章


対峙


〜みのり&涼介の場合〜





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「碧! 早く紅の援助に!」


 今のところ圧されはいないようだが倍以上の体格を持つ相手に

どれだけ苦戦を強いられていることか。

みのりは紅を想い、捲し立てた。しかし碧は未だ狸の背中に乗った

まま地面を見ている。


「問題ありませんよ。僕の紅は強いんですよ?」

「確かに」

「でも相手は猪の獣人なのよ」


 みのりは、慌てもしない碧とそれに同意する涼介に顔をしかめた。


「まあ、見ていてください」


 そう言うと碧は、さも愉しげに笑みを深め紅へと視線を移した。

碧の声が聞こえたのだろうか。猪から距離を取り、動きを止める。


「お嬢さま、守る!」


 紅が自身へ喝を入れるかのように言い切ると同時に猪が紅へ

襲いかかってきた。しかし紅は素早い動きと小柄な体を活かし、

猪の攻撃をよけている。

右へ左へと動く紅に苛立ちを募らせたのだろう。猪が吠える。


「お前は潰す!」


 猪の獣人が紅の頭上目がけて振り下ろす。

だが紅は器用にそれをよけ、相手の懐に入り込む。そして猪の顎を

下から掌で突き上げた。


「ぐわ!」

「すげー」


 涼介が感嘆の声をあげる。紅の攻撃はなおも続いていた。

たたらを踏み、前かがみになる猪のこめかみへ回し蹴りを

喰らわせる。


「ぐおっ!」


 その一撃を最後に、猪の獣人は白目をむいたまま横へ倒れた。


(……倒しちゃった)


 小さく息を吐き出している紅の姿を、みのりはあんぐりと口を

開けたまま見つめた。










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