Gold Plum
第六章
対峙
〜みのり&涼介の場合〜
六
DIC
「きっと昨日のおじちゃんの話が良かったんだよ」
「そうか? そうかあ……」
太一言葉に山波の声が少しだけ弾んだものになった。
褒められて嬉しいようだが、それにしても「狼のお兄さん」とは。
(そうだ。確か、朔太郎! 狼谷朔太郎<かみやさくたろう>さんだ!)
朔太郎の孫だったのか。
あんな思慮深い人の孫なのだから、
人間に対して情けをかけるのは当たり前なのかもしれない。
(教育の賜ってやつだよな)
美都子の教育とは正反対だ。
(ん? でも確か、山波さん暴れる男、的なこと言ってたよな)
視線を上向け考え込んでいると、
正志(だたし)と呼ばれた鹿の獣人が従兄の飛田へ向かい叫んだ。
「おい! お前もその人間の女から離れろ!」
だが、飛田は盛大に角をかたむける。
「へ? なんで? だって僕の婚約者だよ?」
「飛田君……」
この危ない状況でうっとりと飛田を見あげる芽衣子を見ながら、
涼介は胸の辺りがむず痒い気持ちになった。
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