Gold Plum

第六章


対峙


〜律子＆麻里の場合〜


二


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「……実は、満さんのことなんです……」


　麻里はドーム型のレアチーズケーキを食する手をとめ、俯く。

失礼なことだとは思いつつ、律子の目を見ることができなかった。


「満君？」


　律子の怪訝そうな声が届き、麻里は首肯する。


「はい。満さん、私たちのこと、敵だって言うんです」


　いつも危ない時に助けてくれる彼に敵だと言う。

その表情は悲しげで、思い出すだけで胸が痛んだ。

胸の痛みは日々激しくなるばかりで、

どうにも対処できない状態にまでなってしまっている。


（なんでこんなに苦しいの？）


　満のことを理解したい。できるなら彼を苦悩から救いたい。

だが、どうしたらいいのかわからないのだ。

水色のスカートを握り締めていると、律子の声が響いてくる。


「あー。まあ、そうねぇ。

満君は獣人だからそういう考えを持っていても不思議ではないわね」


　律子の言葉に、麻里は顔をあげる。


「そんなのおかしいです」


　そうだ。そんなの間違っている。

さっきまでは見ることのできなかった律子の瞳を覗き込み、

胸に手をあて訴える。


「私は確かに昨日お話した通り都の人間で、

高松室長と梅畑市長が親密にしているところも目撃しています。

でも、満さんだって市長と結託しているような感じだったのに、

高松室長が悪いこと考えてるかなんてまだわからないし。

それに、もし２人がそんな人なんだとしても、私たちは違う。

そうじゃありませんか？！」


　身を乗り出して向かいの律子へ迫った。

だが、律子はのんびりと頬に手をあてるだけである。


「そうねー。麻里さんの言う通り、私も獣人の敵ではないわ。

それは獣人側にも言えることよね」


　確かにその通りだ。

　麻里は律子の話を聞くために、ソファへ座り直した。