Gold Plum





第六章


対峙


〜みのり&涼介の場合〜





BIA




「えぇっと、カメラ、カメラ。ああ、でもビデオの方がいいかな?」

「そろそろ成長もとまるころかしら?」


 みのりは、両手をつき出しながら携帯を操作する太一の声を

聞きながらぽつりと呟いた。


「そうだね」


 涼介が律儀にも、太一の問いへ応える前にこちらへ相槌を打った。

たった一言だけだが、返されるとは思っていなかった独り言の

返事にみのりは頬を緩める。


「太一君。撮るならビデオのほうがいいかもしれないね。

今からなら咲くところがちょうど映せるよ」

「わかった!」


 太一は涼介の提案に一も二もなく飛びついた。

それに対し、山波が鼻を鳴らす。


「無粋だなあ。こういうのは心に収めろ。心に」

「いいじゃないですか。記念なんですから」


 小越が太一の肩を持つように山波を宥めた。そのあとを太一が続く。


「ぼくが見るんじゃないよ。

ばぁちゃんに見せてあげるって約束したんだ」

「そうか。そうだったな……。

悪いこと言っちまったな。すまねえ、坊主」


 携帯の画面を見つめたまま話す太一に、山波が申し訳なさそうに

襟足を撫でた。


「ううん。そうだ、おじちゃん。

これ、リオのお祖父ちゃんたちにも見せてあげようよ」

「おう! それはいいアイデアだな!」


 さすが大人顔負けの気遣いができる太一だ。

しょんぼりしていた山波が一瞬で元気になった。

みのりが感心している間にも梅の木の成長は止まらない。

さっきまで若木だった木は、みのりの身長と同じくらいまで成長し、

いくつもの蕾をつけていた。

徐々にふっくらする白い蕾がほころび始め、満開の花が咲き誇る。

春を告げる優しい梅の香りが辺りに広がると一気にその花びらが

地面へと落ちた。










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