Gold Plum

第六章


対峙


〜律子＆麻里の場合〜


二


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「飛田さんだっけ？　彼が良い例よね。

人間だろうが獣人だろうが結局のところ人それぞれなのよ。

だから満君には満君の言い分があるじゃないのかしら？」


　自身の考えを披露する律子に麻里は吐息する。

彼の言い分を訊くことができればどんなにいいか。

出された紅茶に一くち口へ含み、麻里は琥珀色の液体を見つめる。


「満さんは、私の言うことをちっとも聞いてくれません。

人と獣人が仲良くできる道が必ずあるはずだって、

そう信じてるって言っても彼は苦しげな顔をするばかりで……」


　律子を見やると、彼女が黙って先を話すよう促してくる。

麻里はティーカップを置き、それなのに、と話を続けた。


「敵であるはずの私を助けてくれるし。

そんな優しい満さんの辛そうな顔、もうこれ以上見たくないんです。

でも、私にできることなんて何もないし。もうどうしたらいいのか……」


　嫌われているのなら、なぜ助けてくれるのだろう。

　自分だってそうだ。

あれほど敵だと拒絶されているのに、

なぜこんなにも満のことが気になるのだろう。


（獣人と和解することが、みのりさんの解放にもつながるから？）


　確かにそうなのかもしれない。

仕事が上手くいけば、自分が本来の仕事に戻ることができる。


（あれ？　でも、ちょっと待って……？）


　もし東郷都の職員に返り咲くことができたなら、

満と会うこともなくなってしまうのではないか。


（それは寂しい……）


　もう会えないのかと思うだけで、泣きたくなるほど辛い。


（どうして？）


　思考が混乱してまとまらない。

こめかみに手をあて困惑していると、律子が溜め息を吐いた。