Gold Plum

第六章


対峙


〜律子＆麻里の場合〜


二


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「お願いします、お願いします、お願いします、お願いします、

お願いします」


　念仏のように唱える麻里の声に合わせるように、

律子もスマートフォンを強く握り締める。


（お願いします、お義姉さん！　麻里さんと会ってください）


　心の中で懇願する。こちらの熱意が伝わったのだろうか。

直実が、いいわよ、と事もなげに言い放ってきた。


「え！　いいんですか？　あ、ちょっと待っててもらえますか？」


　あまりにも気軽に応えくる義姉に、声が裏返る。

彼女の気が変わる前に予定を決めてしまわなくては。

律子は麻里へ確認を取るため、受話器を口から離した。


「麻里さん、あなた今日お仕事休みなのよね？

この後も時間空いてる？」

「はい！　空いてます！」


　赤べこのように首を縦に振り続ける麻里をそのままに、

律子はスマートフォンへ話しかける。


「お義姉さん？　お待たせしました。大丈夫です。ええ。はい。

香夢異（かむい）ですか？　知ってます。そこへ１５時。

はい、わかりました」


　待ち合わせ場所は、種族関係なしに入ることのできる喫茶店

だった。そこなら、獣人たちの話をしても白い目で見られることは

ないだろう。律子はスラスラと時間や場所を提案してくる義姉へ、

心の底から感謝した。


「ありがとうございました。よろしくお願いします。

それじゃまた後程……失礼します」


　あとでね、と朗らかな声とともに切れる機械音を確認し、

律子も電話を切る。そして緊張をほぐすように深く息を吐いた。