Gold Plum

第六章


対峙


〜律子＆麻里の場合〜


二


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「おい、どうした。早く撃てよ。チャンスだろうが」


　横合いから何やら声がする。だが、満から目を逸らすことができない。


（こんなことしてる場合じゃないのに……）


　そうは思うものの、身体が動かない。


「いや、だって、なんか、なあ……」


　困惑しきったような声をあげたのは、Ｔシャツ姿をした獣人の方だろう。


（私だってこんな場合じゃないことはわかってるわよ！　でも……）


　水晶のような澄んだ瞳が自分だけを見ている。

その事実が変な浮遊感をもたらし、一項に考えがまとまらないのだ。


「あれで二人とも無自覚とかないわー。

絶対付き合ってるでしょう？　ねえ、そう思うわよね？」


　間近で律子の声がする。

聞き捨てならないことを言っている気もするが、

出すべき声さえ定かではなくなっていた。


「……お前は長のなんなんだ？」


　スーツ姿の獣人らしき声が問う声へ、律子が小さく唸る。


「うーん？　なんなんだって言われてもねー。顔見知り程度じゃないかしら？」


　危機感のない声音にほっとしていると、獣人のほうも何の気ない声で

そうか、と応じた。


「なら、もう面倒だからお前を人質にして、長にあの女と

交換してもらうことにするか」


　かちゃり、と思い音がして、一気に呪縛が解ける。

慌てて律子へ視線を送ると、

銃を突きつけられている彼女が目に飛び込んできた。