Gold Plum





最終章


再生


〜みのり&涼介の場合〜





IIA




 そもそも鏡のないところで直そうとしたことが間違いだったの

かもしれない。みのりはなかなか鬘の中へ入っていかない地毛に、

イライラし始めた。

 ふいに涼介が近づいてくる気配がした。

手伝ってくれるのだろうか。振り返り涼介の顔を見る。

すると彼は、再び水色の髪の毛を手に取った。そうかと思うと

涼介の顔が徐々に髪の毛へと接近し始める。


(何、何が起きてるの?)


 心臓が痛いくらいに脈打った。

みのりは、涼介の突飛な行動に目を白黒させる。

しかし、動転しているこちらなどお構いなしに、

涼介がのんびりと口を開く。


「今度はカツラなんかじゃなくて、そのままの君が見たいなあ」


 涼介の体がそっと離れて行った。みのりは、ホッと息を吐く。


(手を繋ぐのは嬉しいけど、こういうのはまだ私には早すぎるわ)


 みのりは少しだけ涼介との距離を取った。

しかし、彼はそのことに気づいているのか、いないのか。

朗らかな笑みを向け、答えを待っている。


「で、でも、そんなことしたらまた雪姫の生まれ変わりだって……」

「だって、そのほうがより君らしい、だろ?」


 涼介の言葉は目から鱗が落ちる気分だった。

自分という個を認めて欲しいために黄金梅を実らせた。

だが、その中に隠すことが当たり前になっている髪の毛と

瞳のことはなかった。


「私らしい……。

そうね。急には無理だけどちょっとずつ外せるようにしていくわ」

「楽しみにしてるよ」


 今はまだ長年隠してきたことを公にする勇気が出ない。

でもいずれは、すべてを外し、水色の髪の毛と瞳を晒せる日がくる

だろう。

黄金梅の実を涼介たちと一緒に実らせることができたのだから。


(私はもう一人じゃないんだものね)


 涼介が手を差し出してくる。先導する手でも付き従う手でもない。

彼の手はともに並んで歩いてくれる手だ。

 みのりは涼介の手を取り、車で待つ碧と紅の元へ歩き出した。



END







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