Gold Plum





最終章


再生


〜みのり&涼介の場合〜





IA




「悪いか?」


 雅秋の問いかけに、涼介は慌てて手を左右に振ってみせる。


「いえ、悪いわけじゃないですが……」


 語尾を濁していると、雅秋がテーブルを顎で示してきた。


「なら座りなさい。由真も久隆(ひさたか)ももう座っているんだから」

「はい」


 頷きながら移動を開始する。

由真の隣に座ると、向かいに向かいにいる雅仲の子で赤ん坊の久隆が、

ベビー用の椅子で元気に動いているのが目に入った。

まんま、と母を見遣る姿はかわいらしく、自然と口元が綻んでくる。


「おとうちゃま、おじちゃま今日はご用があるから海にはいけませんって」


 由真がまだ少しだけ不満げな様子で父親に報告する。


「アルバイトか?」


 尋ねてくる雅秋に虚を突かれ、涼介は返答に窮した。


「え? あー、いいえ。友人とちょっと」


 視線を泳がせると、雅秋が新聞を畳みながら器用に肩を竦める。


「なんだ。デートか」


「な、なんで!」


 わかったんだろう。

長兄の様子を窺っていると、代わりに雅仲が答える。


「そりゃこんな早くにも関わらず起きてきたし、

いつもよりしゃれっ気をだしてるし。ねえ、兄さん」


 心底楽しそうな雅仲を前に頷き、雅秋がひたと瞳を見据えてくる。


「相手は次期当主なんだ。粗相のないようにな」


 涼介は雅秋の言葉にむっとする。


「前にも言いましたけど、みのりさんはみのりさんです。

そういうのは関係ないですよ」


 次期当主だから好きになったわけではない。

みのりがみのりだから好きになったのだ。

憤然として答えると、雅秋が小さく鼻を鳴らす。


そんな長兄に対しフォローを入れてきたのは、彼の妻、美紀だった。










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