Gold Plum
最終章
再生
〜みのり&涼介の場合〜
二
IA
「悪いか?」
雅秋の問いかけに、涼介は慌てて手を左右に振ってみせる。
「いえ、悪いわけじゃないですが……」
語尾を濁していると、雅秋がテーブルを顎で示してきた。
「なら座りなさい。由真も久隆(ひさたか)ももう座っているんだから」
「はい」
頷きながら移動を開始する。
由真の隣に座ると、向かいに向かいにいる雅仲の子で赤ん坊の久隆が、
ベビー用の椅子で元気に動いているのが目に入った。
まんま、と母を見遣る姿はかわいらしく、自然と口元が綻んでくる。
「おとうちゃま、おじちゃま今日はご用があるから海にはいけませんって」
由真がまだ少しだけ不満げな様子で父親に報告する。
「アルバイトか?」
尋ねてくる雅秋に虚を突かれ、涼介は返答に窮した。
「え? あー、いいえ。友人とちょっと」
視線を泳がせると、雅秋が新聞を畳みながら器用に肩を竦める。
「なんだ。デートか」
「な、なんで!」
わかったんだろう。
長兄の様子を窺っていると、代わりに雅仲が答える。
「そりゃこんな早くにも関わらず起きてきたし、
いつもよりしゃれっ気をだしてるし。ねえ、兄さん」
心底楽しそうな雅仲を前に頷き、雅秋がひたと瞳を見据えてくる。
「相手は次期当主なんだ。粗相のないようにな」
涼介は雅秋の言葉にむっとする。
「前にも言いましたけど、みのりさんはみのりさんです。
そういうのは関係ないですよ」
次期当主だから好きになったわけではない。
みのりがみのりだから好きになったのだ。
憤然として答えると、雅秋が小さく鼻を鳴らす。
そんな長兄に対しフォローを入れてきたのは、彼の妻、美紀だった。
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