Gold Plum





最終章


再生


〜みのり&涼介の場合〜





IB




「そうよ、あなた。

恋愛は自由なんだから。そういう堅苦しいのは良くないわ」

「まあ、そうだが……」


 美紀の言に頷きながらも、やはり不満なのだろう。

眉根を寄せる。


「姉さん。兄さんだって、そういきなり変われはしませんよ」


 雅仲が美紀へストップをかけると、美紀が小さく肩を落とした。


「そりゃそうだけど。ねえ、久隆ちゃん」


 斜め向かいで手足をばたつかせている久隆へ微笑みかけると、

久隆がだーっと声をあげる。

赤ん坊に言ってもわかるわけないと思うのだが。

幼い甥っ子まで巻き込むことになるとは。

どうにも決まりが悪く頬を掻いていると、雅仲の妻、依子が雅仲を見た。


「変わろうとしてるからこそ、言いたいのよ、雅仲君」


 雅仲へ進言する依子に、雅仲が首をかしげる。


「そういうもんなのか」

「そういうものよ」


 依子が力強く頷くと、辺りに沈黙が下りた。

重い空気ではないが、皆自然と長兄へと視線を移す。

一同黙って彼の一言を待っていると、雅秋が両手を合わせた。


「まあいい。とにかく腹ごしらえだ。――いただきます」

「いただきます!」


 雅秋の言葉を合図に食事にかかる。

今日のメニューは和食だ。

白いご飯にワカメと豆腐の味噌汁、

鮭の塩焼きにほうれん草のお浸しにだし巻き卵。

刻み込み綺麗な円柱に型づいた柴漬けも小皿に盛られている。


(うまい!)


 涼介は味噌汁を一くち口に含んで内心で叫ぶ。

温かな塩味のある飲み物が五臓六腑に染み渡った。


(いくらでも食えそう)


 これぞ日本の朝ご飯。涼介はご機嫌な気分で食事を口へと運び続けた。










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