Gold Plum
最終章
再生
〜みのり&涼介の場合〜
二
ID
「それはそうと、お前、今日はどこで待ち合わせだ?
なんだったら駅まで乗って行きなさい」
雅秋の言葉に、涼介は手を横に振る。
「バスで行くからいいですよ。
兄さんたちは海へ向かってください。潮干狩りは混むから」
渋滞で目的地へ着かなかった、なんてことになったら由真に悪い。
すると雅仲が声をかけてきた。
「涼介、それなら俺が送っていくよ。兄さんはせっかくの家族水入らずなんですから、
寄り道しないで海へ行ってください」
雅仲の提案に、雅秋が頷く。
「うむ。そうか? なら、頼む。悪いな」
消極的ではあるが礼を言う長兄に対し、涼介はまた瞳を瞬かせる。
珍しすぎて反応が遅れがちだ。
だが次兄はそうでもないらしい。
なんでもないことのように雅秋へ向かい微笑んでいる。
「いえ、郵便局に用事があるだけですから」
話が勝手に進んでしまうのが悔しくて、涼介は問いかける。
「俺の意思は無視ですか?」
頬を膨らませぎみで質問すると、兄たちではなく美紀が答えた。
「そりゃそうよ、涼介君。あのみのり様との初デートなんて、
家族の誰かが見て報告してもらわないと。せっかくの楽しみが
減っちゃうじゃないの」
「結局いじり対象ってわけですか」
面白くない、と腕を組んでみせると、依子が声をあげて笑う。
「まあまあ、悪気があってのことじゃないんだから」
「わかってますよ」
不機嫌なまま時計を見遣る。
すると、待ち合わせの時間まで残すところあと30分となっていた。
「……あ、そろそろ時間だ」
「そうか。じゃあ、行こうか」
雅仲が立ち上がる。
はい、と答えて席を立つと、雅秋が口を開いた。
「気をつけて行ってきなさい」
嫌味も何もない気遣いのある言葉で送られ、涼介は目を点にする。
ぎこちなくはい、と返答して扉へ向かうと、
義姉たちが口々に見送りの言葉をかけてきた。
「成功を祈ってるわ」
「みのり様によろしくね」
「おじちゃまふぁいとー!」
由真にまで謎のエールを送られ、
涼介はなんだか釈然としない気分で食堂を後にした。
一つ前を読む GPの部屋に戻る 次を読む
|