Gold Plum





最終章


再生


〜みのり&涼介の場合〜





ID




「それはそうと、お前、今日はどこで待ち合わせだ?

なんだったら駅まで乗って行きなさい」


 雅秋の言葉に、涼介は手を横に振る。


「バスで行くからいいですよ。

兄さんたちは海へ向かってください。潮干狩りは混むから」


 渋滞で目的地へ着かなかった、なんてことになったら由真に悪い。

すると雅仲が声をかけてきた。


「涼介、それなら俺が送っていくよ。兄さんはせっかくの家族水入らずなんですから、

寄り道しないで海へ行ってください」


 雅仲の提案に、雅秋が頷く。


「うむ。そうか? なら、頼む。悪いな」


 消極的ではあるが礼を言う長兄に対し、涼介はまた瞳を瞬かせる。

珍しすぎて反応が遅れがちだ。

だが次兄はそうでもないらしい。

なんでもないことのように雅秋へ向かい微笑んでいる。


「いえ、郵便局に用事があるだけですから」


 話が勝手に進んでしまうのが悔しくて、涼介は問いかける。


「俺の意思は無視ですか?」


 頬を膨らませぎみで質問すると、兄たちではなく美紀が答えた。


「そりゃそうよ、涼介君。あのみのり様との初デートなんて、

家族の誰かが見て報告してもらわないと。せっかくの楽しみが

減っちゃうじゃないの」

「結局いじり対象ってわけですか」


 面白くない、と腕を組んでみせると、依子が声をあげて笑う。


「まあまあ、悪気があってのことじゃないんだから」

「わかってますよ」


 不機嫌なまま時計を見遣る。

すると、待ち合わせの時間まで残すところあと30分となっていた。


「……あ、そろそろ時間だ」

「そうか。じゃあ、行こうか」


 雅仲が立ち上がる。

はい、と答えて席を立つと、雅秋が口を開いた。


「気をつけて行ってきなさい」


 嫌味も何もない気遣いのある言葉で送られ、涼介は目を点にする。

ぎこちなくはい、と返答して扉へ向かうと、

義姉たちが口々に見送りの言葉をかけてきた。


「成功を祈ってるわ」

「みのり様によろしくね」

「おじちゃまふぁいとー!」


 由真にまで謎のエールを送られ、

涼介はなんだか釈然としない気分で食堂を後にした。










一つ前を読む   GPの部屋に戻る   次を読む