Gold Plum
最終章
再生
〜みのり&涼介の場合〜
六
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玄関の三和土から靴を履き立ち上がると、
後ろから山波の残念そうな声が降ってきた。
「もうお帰りになるんですか? お昼をご一緒に、と思ったんですが……」
うなぎの注文表を手にしながら白髪混じりの髪を
かいている山波に、みのりが微笑む。
「お礼をお伝えしたかっただけですから」
なんの含みも感じさせない言葉に知らず胸が熱くなった。
再会した数日前の彼女だったらこんなふうに山波へ笑いかけただろうか。
(少なくとも、ちょっとだけ迷惑そうにしてたかもな……)
みのりのことだから言葉には出さないだろうが、
顔にはでていただろう。
それが今ではどうだ。
一度は自分を裏切った山波を心から受け入れ、感謝さえしている。
(変わったからか? いや、きっとこれが本来のみのりさんなんだ)
自分が気づかずにいただけで、
彼女は幼い頃からずっと優しかったのだ。
ただそれを表現するのが苦手なだけで。
(この娘<こ>が俺の彼女、なんだよなあ……)
しっかり護っていかなくては。
決意を新たにしていると、
では、と山波が慌てて玄関の電話口に重ねてあった箱を一つ手に取った。
「せめてこれを持っていってください」
長方形の茶色い箱には、マカデミアンナッツチョコレートと
英語で書かれた金色のロゴが光っている。
いかにも美味しそうなチョコレートのイラスト付きだ。
(誰かからのお土産かな?)
考えていると、横で喉を鳴らす音がした。
驚いて視線を向けると、
いつの間にか横にいた紅の瞳が輝いているのが目に入った。
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