スイーツ娘、村へ帰る。
第一章
1−1
「ここでさっくり混ぜ合せて……」
アローナは台所でいつものように、お菓子作りに没頭する。
慎重に赤い生地を混ぜ合わせふと息を吐いた。
アローナはお菓子作りのプロであるパティシエールを目指している。
目標としているのは王宮お抱えのパティシエールである
サラルーナ・ドヴィエという女性だ。
サラルーナの出会ったのは、まだ自分が幼少の頃のことである。
事故で亡くなった両親も健在だった3歳の誕生日に、
チョコレートで作られた花かごをプレゼントしてくれたのだ。
そのチョコレートは見た目と違いとても苦かった。
だが、その綺麗な造形と味のギャップに何故か心惹かれ、
気がつくとチョコレートを手渡してくれた女性に縋りついていた。
「どうやって作ったの?! チョコレートなのに!」
そう尋ねた時、女性はとても優しく微笑んでくれ、
お菓子作りを見せてくれたのである。
以来、アローナはずっとサラルーナを追いかけている。
まだまだ足元にも及ばないが、
いつかきっと彼女と同じようなスイーツを作れるようになりたい。
それが目下の目標だった。
小説の部屋へ戻る 次を読む
|