スイーツ娘、村へ帰る。
第二章
3
「イルミラ!」
「は、はい! なんでしょう?」
口を挟めずもじもじとしていたイルミラが返答すると、
クロナがイルミラへ尋ねる。
「悪いんだけど、しばらく君の家に泊めてくれないかな?」
「え!」
クロナの提案を聞いたイルミラの頬が一瞬にして朱に染まる。
「ダメかな?」
首をかしげて問いかけられ、イルミラがブンブンとかぶりを振った。
「いえ! いいえ! ぜひ来てくださいませ! 歓迎いたしますわ!」
イルミラが瞳を輝かせると、クロナが満足げに微笑む。
「ありがとう」
嬉しそうに見つめ合う二人の会話にアローナは口を挟んだ。
「ちょっとクロナ!」
文句を言おうと一歩踏み出すと、クロナが冷たい目を向けてくる。
「そういうわけで僕しばらく帰らないから」
「はあ? 何を言って……」
何がそういうわけなのだ。
意味がわからない、と再び口を開こうとするが、
先にクロナが踵を返してしまう。
「行こう、イルミラ!」
「あ、はい!」
ずんずんと庭をでていくクロナを前に呆然としていると、
返事をしたイルミラが小さく一礼してクロナの後を追った。
「なんなのよ、いったい……」
アローナは誰もいなくなった庭で、ぽつりと呟いた。
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