スイーツ娘、村へ帰る。



第二章





「しんっじらんない!」

 日も高く昇り昼食の時間まであと一刻に迫った頃。

アローナは1人台所でパイ生地を捏ねていた。

「ほんっとうに帰ってこないんだから!」

 毒付きながら台の上で生地に力を込める。

徐々に粉っぽさが消えてきた。

「だいたいクロナのくせに口答えをするなんて生意気すぎなのよ!」

 何度考えても腹が立つ。

帰ってきたらどうしてやろうか。

などと思いつつ、アローナは生地を丁寧にまとめてめん棒で伸ばす。

「あまつさえイルミラ嬢の家に転がり込むなんて!

慎みってもんがないわ!」

 綺麗にまとめたパイ生地をバンッと台へ叩きつけ、

再度めん棒に力を込めた。

「まさか本気で勝負する気なのかしら?」

 こりごりだ、と叫んだ時のクロナを思いだしふと手をとめる。

「まさかね」

 ははは、と乾いた笑いを浮かべていると、勝手口からノック音が響いた。










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