スイーツ娘、村へ帰る。
第二章
6
「しんっじらんない!」
日も高く昇り昼食の時間まであと一刻に迫った頃。
アローナは1人台所でパイ生地を捏ねていた。
「ほんっとうに帰ってこないんだから!」
毒付きながら台の上で生地に力を込める。
徐々に粉っぽさが消えてきた。
「だいたいクロナのくせに口答えをするなんて生意気すぎなのよ!」
何度考えても腹が立つ。
帰ってきたらどうしてやろうか。
などと思いつつ、アローナは生地を丁寧にまとめてめん棒で伸ばす。
「あまつさえイルミラ嬢の家に転がり込むなんて!
慎みってもんがないわ!」
綺麗にまとめたパイ生地をバンッと台へ叩きつけ、
再度めん棒に力を込めた。
「まさか本気で勝負する気なのかしら?」
こりごりだ、と叫んだ時のクロナを思いだしふと手をとめる。
「まさかね」
ははは、と乾いた笑いを浮かべていると、勝手口からノック音が響いた。
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