スイーツ娘、村へ帰る。



第二章





 台布巾で手を拭いて勝手口を開けると、見知った顔があった。

「あ、カリナさん! こんにちは」

 笑顔で挨拶をすると、カリナが不思議そうに首をかしげてきた。

「あら? 1人?」

「はあ、まあ、色々あって……」

 どう答えていいのか迷って頬をかく。

すると、カリナが残念そうに眉根を寄せた。

「クロナ君も喜びそうな話持ってきたんだけどな」

 カリナは村はずれに不思議堂という店を構える女主人だ。

そこでは主(おも)に、村だけでなく国外から入手した珍しい食材や

スパイスを扱っていて人気を集めている。

アローナも以前あった大会で世話になって以来、

常連客の1人として何かと頼りにしているのだが。

食材を図鑑で調べるのが趣味であるクロナとは気が合うらしく、

たまにカリナのほうから家へ訪ねてきていた。

「また新しい商品ですか?」

「当たり」

 アローナが問うと、カリナがにやりとする。

「実物の入荷はまだ先なんだけど、こんなヤツなの」

 ほくほく顔でチラシを見せてくる。

用紙に書かれた絵は丸い桃のような形状をしていた。

「これって、種?」

 果物というよりは何か硬い殻に覆われている気がする。

見たことのない食材に首を捻っていると、カリナが頷いた。

「ま、そんなようなものね。『クルミ』っていうんだけど、

殻を割って、中を食べるの」

「へえ〜」

 ということは、アーモンドのようなものか。

(どんな味がするのかしら?)

 カリナが薦めるくらいだから、きっとおいしいに違いない。

好奇心が湧き上がり内心でほくほくとしていると、

それが顔に出ていたのかカリナが満足げに笑った。










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