スイーツ娘、村へ帰る。
第二章
9
「はーい」
今日はなんだかいつもより慌ただしい。
アローナは手を洗い、エプロンで手を拭いてから勝手口を開けた。
「あら? あなたイルミラ嬢のところの」
扉の向こうに立っていたのは、イルミラ邸で働いている執事だった。
アローナは名前を思いだそうとしてできず、言葉を濁す。
小さくかぶりを振っていると、相手が名乗ってきた。
「使いのウィンプスと申します。どうぞお見知りおきを」
ゆっくりとお辞儀をしてくるウィンプスへ軽く会釈して、
アローナは辺りを見回す。
「今日はイルミラ嬢は来ないのね。クロナが何かしちゃった?」
高い物を壊したりしていなければいいのだが。
最悪のことを想定して眉を顰めていると、
ウィンプスが懐から何かをだしてくる。
「これを」
差しだされたのは白い封筒だった。
アローナは首をかしげながら手を伸ばす。
「手紙?」
半信半疑で受けとると、アローナはゆっくり中身を開いてみた。
「本日はクロナ様から言付かって参りました。ぜひご一読を」
ウィンプスが一礼したまま説明を付け加えてきて、
アローナは眉間の皺を深くする。
「クロナってばいくら帰りにくいからってわざわざ手紙なんか……」
文句を言いながら手紙を開き、目を瞠った。
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