スイーツ娘、村へ帰る。



第二章





「はーい」

 今日はなんだかいつもより慌ただしい。

アローナは手を洗い、エプロンで手を拭いてから勝手口を開けた。

「あら? あなたイルミラ嬢のところの」

 扉の向こうに立っていたのは、イルミラ邸で働いている執事だった。

アローナは名前を思いだそうとしてできず、言葉を濁す。

小さくかぶりを振っていると、相手が名乗ってきた。

「使いのウィンプスと申します。どうぞお見知りおきを」

 ゆっくりとお辞儀をしてくるウィンプスへ軽く会釈して、

アローナは辺りを見回す。

「今日はイルミラ嬢は来ないのね。クロナが何かしちゃった?」

 高い物を壊したりしていなければいいのだが。

最悪のことを想定して眉を顰めていると、

ウィンプスが懐から何かをだしてくる。

「これを」

 差しだされたのは白い封筒だった。

アローナは首をかしげながら手を伸ばす。

「手紙?」

 半信半疑で受けとると、アローナはゆっくり中身を開いてみた。

「本日はクロナ様から言付かって参りました。ぜひご一読を」

 ウィンプスが一礼したまま説明を付け加えてきて、

アローナは眉間の皺を深くする。

「クロナってばいくら帰りにくいからってわざわざ手紙なんか……」

 文句を言いながら手紙を開き、目を瞠った。










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