スイーツ娘、村へ帰る。



第二章

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「何これ? 『果たし状』?」

「はい」

 誰にともなく問いかけると、ウィンプスが律儀に返答してきた。

アローナはそんなウィンプスを苦々しく思いながら、

手紙を読み上げる。

「何なに? 『2週間後のお昼にカルーナ邸の庭園にてお菓子勝負されたし。

テーマは昼食に合うケーキ。勝者は敗者の言うことを

なんでも聞くこと』ですって?」

 まさか昨日勢いで言ったことが本当になるとは思いもしなかった。

「クロナってば本気だったのねぇ。結構驚きだわ」

 あのクロナが自分に歯向かってくるとは。

(あの子も男の子だったのねぇ)

 頬に手を当てしみじみこれまでのクロナを思いだしていると、

ウィンプスが問いかけてきた。

「お返事はいかがなさいますか?」

 ウィンプスの質問に、アローナは笑みを浮かべる。

「もちろん受けるわよ。

お菓子勝負と言われて逃げるわけにはいかないもの!」

 胸を叩いてみせると、ウィンプスも小さく頬を緩めた。

「ではそのようにお伝えいたします」

「ええ。イルミラ嬢にしばらく迷惑かけちゃうだろうけどよろしくね、

って言っておいて」

「かしこまりました」

 恭しくお辞儀をして、ウィンプスがでは、と踵を返す。

アローナは去っていくウィンプスを見送り扉を閉めてから、

そっと息を吐いた。










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