スイーツ娘、村へ帰る。



第二章

11



「クロナがマジであたしに挑んでくるとはねえ」

 アローナはパイ生地を丸くまとめ、濡れ布巾をかける。

風通しのよいところへ置きながらしばし感慨に浸った。

(基本泣き虫だしねぇ)

 今はそうでもなくなったが、この家に来た頃は本当によく泣いていた。

そう言えば、なんとか笑わせたくてクッキーを作ってみたのが

記念すべき第1作だった気がする。

(あの頃は普通に作ってたっけ)

 おいしい、と言って

泣き笑いの表情を浮かべた小さなクロナももう14歳だ。

時の流れは早い。

「まあ、あの子が一人立ちしていくのは従姉として嬉しいけど、

勝負は勝負だし。負けるわけにはいかないわね」

 アローナは1人ガッツポーズをする。

「お昼に合うお菓子って言ったらやっぱり

シフォンケーキかスコーンとか?」

 フルーツパイでもいいかもしれない。

アローナはあれこれとお菓子を思い浮かべ、ふと動きをとめた。

首を横へ振り唇を噛む。

「それじゃあ、やっぱりあたしらしさが足りないか」

 顎に手を当て台所を行ったり来たりするが、いい知恵が浮かばない。

「んー! こういう時いつもならどうしてたっけ?」

 考えて、あ、と声をあげた。

脳裏を図鑑を開いているクロナが過ぎり、頭を抱える。

「うー! いないもんはしかたないじゃない! 

そうよ! あたしが自分で調べちゃえばいいんだわ!」

 確か図鑑はクロナの部屋に置きっ放しのはずだ。

(あれさえあればこっちのものよ!)

 アローナはほくそ笑み、階段を駆け上がった。










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