スイーツ娘、村へ帰る。



第三章





「何言ってんだい! とっくに村中の噂になってるよ。

クロナがアローナを捨ててイルミナ嬢に走ったってね」 

「はあ!?」

「手切れ金争いでクロナと直接対決するんだろう?

  そんな軟派な男からはがっぽり取ってやるのが一番だよ!」

「ち、違うってば! なんだってそんな話になってんのよ!」

 カラカラと笑い声をあげるおばちゃんの言葉を、

アローナは即座に否定する。 

「まあまあ、そんなに隠さなくてもわかってるから。

それよりこれ、食べてみな」

 背中を擦られ口に何かが押し込まれた。

「え?」

 口の中に香ばしい味と食感が広がる。

「おいしい……」

 何かの木の実だろうか。

ゆっくりと口中で味わっていると、おばちゃんが得意げに鼻を反らした。

「おいしいだろ? 『胡桃』ってんだよ」

「あ、これが?」

 アーモンドよりも少し癖があるが、柔らかくてハマる味である。

「なんだ。知ってたのかい?」

 あからさまにがっかりしているおばちゃんへ、アローナはかぶりを振った。

「食べたことはないわ」

「でも知ってたんだろう?」

「カリナさんがチラシくれたから。おばちゃん不思議堂に行ったの?」

 すねたように肩を竦めるおばちゃんにアローナは尋ねる。 

「さっき買ってきたんだよ。食べてみたらこれがおいしくておいしくて」

 興奮したように頬を紅葉させ手をぱたぱたと前後へ振るおばちゃんの言葉に、

アローナは目を輝かせた。










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