スイーツ娘、村へ帰る。



第三章





「まだあるかしら?」

 自分だけでなく他の人もおいしいという物を使えば、

食材の知識豊富なクロナを出し抜けるかもしれない。

期待大で尋ねると、おばちゃんが首をかしげた。

「今行けばまだあるんじゃないかねぇ」

「本当?」

 やったわ、とアローナは手を組んで飛び上がる。

「あ、でもクロナだってもう知ってるかもよね……」

 カリナさんがイルミナの屋敷にも行くようなことを言っていた気がする。

(駄目だわ。他の何かを探さなくちゃ……)

 唇をへの字にして腕を組む。

秋ならかぼちゃやさつまいもだが。

そんなことはあちらも考えていそうだ。

(スイーツブリッジ渡ってあれだけ食べ歩きしたのに

何も思い浮かばないなんて!) 

 悔しさに唇を噛み締めていると、おばちゃんが目を瞬いてきた。

「クロナちゃん? あの子ならまだ市場には来てないよ」

「え! そうなの?」

 アローナは驚いておばちゃんを凝視する。

「ああ。最近はとんと見ないよ。

イルミナ嬢のお屋敷には御用聞きに行くのが常だから。

不思議堂さんは配達お断りのお店だしまだ行ってないんじゃないかい?」

 何かを思いだすかのように左上を見あげて話すおばちゃんに歓喜した。

アローナはおばちゃんの手を取りぶんぶんと振り回す。

「ありがとう、おばちゃん! あたしも不思議堂さんに行ってみるわ!」

 晴れ晴れとした気持ちで礼を言うと、おばちゃんが大きく頷いてくる。

「役に立てたかい? あんな軟派男に負けんじゃないよ!」

「それは違うってば……」 

 どこでどうねじ曲がってしまったのだろう。

不思議堂へ行く前に誤解を解かねば。

アローナはおばちゃんの手を握ったまま、事情説明に奮闘した。










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