スイーツ娘、村へ帰る。
第三章
8
「洋梨のタルト、洋梨のタルト……っと……」
家に帰り着いたアローナは、
取るものもとりあえずクロナの辞典を調べはじめた。
「あったわ!」
「洋梨のタルト」と書かれた項目を、
目で何度もなぞり頭の中でイメージングしてみる。
「うーんと、洋梨はリンゴパイのリンゴと似てるけど生地が違うわけね」
そういえば、レモンのタルトを食べた時は、
パイより少し硬めな、どちらかというとビスケットに似た食感だった。
「材料はあるし……。よし、作ってみよう!」
アローナは辞典を紙に書き写す。
本を閉じ、クロナの部屋へ辞典を戻した。
立ち上がり腕まくりをして、さっそく材料を揃えはじめる。
「怖がってたってしかたないしね」
失敗ならこれまでもしてきたが、最後はなんとかなってきた。
そうだ、今回だってきっと上手くいく。
仁王立ちして1人頷き、はたと気づいた。
「味見、自分でしなくちゃいけないんだっけ……」
ということは、斬新さを意識しすぎると自滅するということだ。
まかり間違えばお腹を壊し不戦敗、なんてことになりかねない。
「な、なんとかなるわよ。うん」
最初はレシピ通りに作ろう。
アローナは強張っていく身体に叱咤しながら、
小麦粉をふるいに掛けはじめた。
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