スイーツ娘、村へ帰る。



第三章





「洋梨のタルト、洋梨のタルト……っと……」

 家に帰り着いたアローナは、

取るものもとりあえずクロナの辞典を調べはじめた。

「あったわ!」

「洋梨のタルト」と書かれた項目を、

目で何度もなぞり頭の中でイメージングしてみる。

「うーんと、洋梨はリンゴパイのリンゴと似てるけど生地が違うわけね」

 そういえば、レモンのタルトを食べた時は、

パイより少し硬めな、どちらかというとビスケットに似た食感だった。

「材料はあるし……。よし、作ってみよう!」

 アローナは辞典を紙に書き写す。

本を閉じ、クロナの部屋へ辞典を戻した。

立ち上がり腕まくりをして、さっそく材料を揃えはじめる。

「怖がってたってしかたないしね」

 失敗ならこれまでもしてきたが、最後はなんとかなってきた。

そうだ、今回だってきっと上手くいく。

仁王立ちして1人頷き、はたと気づいた。

「味見、自分でしなくちゃいけないんだっけ……」

 ということは、斬新さを意識しすぎると自滅するということだ。

まかり間違えばお腹を壊し不戦敗、なんてことになりかねない。

「な、なんとかなるわよ。うん」

 最初はレシピ通りに作ろう。

アローナは強張っていく身体に叱咤しながら、

小麦粉をふるいに掛けはじめた。










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