スイーツ娘、村へ帰る。
第一章
1−3
「クロナってば。もうすぐあたしのとっておきができるんだけど……」
クロナの部屋の前に立ち、ノックもなしに扉を開ける。
「ってあら? いないんだ」
目的の人物は自室にも居らず、アローナは落胆した。
「どこに行ったのかしら?」
部屋の中へ入り、辺りを見回す。
空いた窓から爽やかな風が吹き抜け、白いレースのカーテンを揺らした。
視線を窓辺へ向けると、目の前の机が目に入る。
なんとはなしに近づくと、
茶色い机の上に「君へ」と題されたノートを見つけた。
「これ、前に見た時めちゃくちゃ怒られたっけ」
確か過去に一度、熱心に書いていたので、
ノートを覗き込んだことがあったのを思い出した。
それはクロナがまだ見ぬ恋人へ宛てたラブレターか、
もしくはポエムだったりする。
「もう二度と見るなって言ってたけど、
置いてあるってことは見ちゃってもしかたないわよね」
アローナは舌を出しながら、ノートを手に取った。
一つ前を読む 小説の部屋へ戻る 次を読む
|