スイーツ娘、村へ帰る。
第四章
1
「あの子なんの用で来たのかしら?」
イルミラ嬢が帰ったあと、アローナは頬に指を当てた。
尋ねればよかったのだが、アドバイス欲しさにすっかり忘れていた。
(悪いことしちゃったなあ)
ただでさえクロナとの喧嘩に巻き込んでしまっているのだ。
(今のあたし、かなり情けないかも)
年上なのに気を遣われてしまった。
アローナは申し訳ない気持ちになり頬をかく。
一度1つのことへ夢中になると、
どうしても他のことが目に入らなくなってしまうのである。
「反省しなくっちゃ」
1人頷き溜め息を吐いた。目前にあるのは洋梨のタルトだ。
「あたしらしさが足りない、かあ……」
今更だが、自分のお菓子作りにはクロナの存在が必要不可欠なのだ、
と言わざるを得ない。
わかっていたはずだったが今思い知った。
「それでも、なんとかしなくっちゃ」
クロナには今までの無茶を謝らなければならない。
けれどそのためにも自分のお菓子作りの力すべてを出し切らなくては。
「とりあえず、不思議堂に行ってみようっと!」
アローナはエプロンを脱いで台へかけると、買い物かごを持って家をでた。
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