スイーツ娘、村へ帰る。



第四章





 市場を抜け村はずれの不思議堂へ向かう道すがら、

アローナはいまだ判然としないお菓子のアイデアを必死に思い描いていた。

「あのクルミって木の実を使うんだったら潰すより

そのままのほうがおいしくなるかも」

 何度も首を縦に振りつつ考える。

「あー、だとすると、洋梨はやめておいたほうがいいかしら……」

 洋梨は他の梨に比べるとしっかりと実の詰まった食感がある。

口中にもどちらかといえばもったりとした甘さが広がるため、

他の梨よりもクセが強い。

 クルミと洋梨。

2つとも強い味わいなだけに、

合わせると互いの良さを相殺してしまう可能性がある。

「甘さと苦味っていうのは悪くないんだろうけど、

やっぱりクルミとかよりもシナモンのほうが合いそうだしね〜」

 やっぱりクルミを諦めたほうが安全かもしれないが、

それだと独自性を見出すことができないのではないか。

「うーん」

 唸りながら歩くことしばし、前方に見慣れた建物が姿を現した。










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