スイーツ娘、村へ帰る。
第四章
3
店の扉を開けると中からいい香りがしてきて、アローナは破顔した。
「なんか芳ばしい香りが……」
匂いをかいでいると奥から店主のカリナが皿を持ってやってくる。
「クルミを混ぜたクッキーを焼いてみたのよ」
種明かしをしながらカリナが皿の中身を見せてくれたため、
アローナは乗っていたクッキーを手に取った。
「いただきまーす」
一くち噛み砕くと、
バターの甘い味とクルミの香ばしい風味が鼻へ抜ける。
「美味しい! 焼くと甘さがさらに引き立つんですね。
それに芳ばしさが苦味と相まって味にアクセントがついてるみたい」
感動して残りのクッキーを頬張りうっとりしていると、
カリナが頷きカウンターへ皿を置いた。
「そうなのよ。あ、よかったらまだあるから食べて」
「ありがとうございます」
促してくるカリナへ微笑んで答えると、カリナがぽんっと手を打つ。
「そう言えば、昨日クロナ君が来たわよ」
「え!」
カリナの言葉にアローナはクッキーを取る手をとめた。
驚いてカリナを見ると、カリナが頬に人差し指をあてながら告げる。
「『柚子』っていう果物があるんだけど、それをたくさん買っていってくれたわ」
カリナの口から発せられた「ユズ」という初めて聞く果物の名に、
アローナは目を瞬かせた。
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