スイーツ娘、村へ帰る。
第四章
4
「『ユズ』ですか?」
アローナが尋ねると、カリナが頷く。
「ええ。現物は売り切れちゃってもうないんだけど、
オレンジより小さくて黄色い果物なの。
香りが強いのに優しい感じなのも特徴かしらね」
つまり、クロナは自分が1番得意とする柑橘系で勝負するということか。
柑橘系のお菓子と言えば、この間の旅行で食べたレモンのタルトや、
オレンジシャーベット、ママレードを塗った焼き菓子や、
果肉入りのジューシーなケーキなどなど、様々なものがあるが……。
(「ユズ」なんて初めて聞いたけど……)
アローナは腕を組み考える。
自分もその「ユズ」とやらで勝負を挑んだほうがいいのかもしれない。
だが、肝心の「ユズ」はクロナが買い占めてしまっているらしい。
(まあ、あらかじめ食材が決まってるわけじゃないしね)
アローナは吐息して、カリナへ問いかける。
「クロナはそのユズを使って何を作るか言ってました?」
「シフォンケーキを作るって言ってたわ」
答えたカリナがカウンターから少し身を乗り出してきた。
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