スイーツ娘、村へ帰る。
第四章
7
「お茶のおかわりでもどう?」
紅茶の温かな香りが漂ってきてアローナは顔をあげた。
「あ、ありがとうございます」
辞典の端に置かれた紅茶を前に礼を言う。
ここはカリナの自室。
小さな文字の並ぶ辞典を閉じてティーカップを手にとると、
カリナがイスに座りながら尋ねてきた。
「どう? いいの見つかった?」
「んー洋梨に関してはだいたいウチで見たのと一緒です」
「そっか。ならこれについて調べてみたら?」
首を回しながら答えると、カリナが大き目の丸い塊を放ってくる。
「あ、そうか。『クルミ』」
「そうそう。この間も言ったけど、
木の実だけを使ったタルトがあったはずなのよ」
硬い殻に覆われた実をキャッチして翳しなるほど、
と大きく頷いていると、カリナが微笑む。
「それってタルトで調べたほうがいいですか? それとも『クルミ』?」
何しろ小さいうえに重い辞典だけにその情報量も膨大だ。
どこからどのように調べたらいいのか少しばかり迷ってしまう。
「そうねぇ……。案外タルトのほうが早いかも」
材料で調べるよりもお菓子の種類で調べたほうが早いわよ、
と提案してくれるカリナを前に、アローナはそうか、と呟いた。
「わかりました。探してみます」
「うん。頑張って」
「はい」
激を飛ばしてくるカリナにガッツポーズして、
さっそく辞典を広げる。
タルトの欄を端から順番に辿っていくがなかなか目当てのものは
見つからない。
ページをめくること数分がたった。
「あ!」
アローナは【タルトノア】と書かれた項目を前に目を見開いた。
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