スイーツ娘、村へ帰る。



第四章





「お茶のおかわりでもどう?」

 紅茶の温かな香りが漂ってきてアローナは顔をあげた。

「あ、ありがとうございます」

 辞典の端に置かれた紅茶を前に礼を言う。

ここはカリナの自室。

小さな文字の並ぶ辞典を閉じてティーカップを手にとると、

カリナがイスに座りながら尋ねてきた。

「どう? いいの見つかった?」

「んー洋梨に関してはだいたいウチで見たのと一緒です」

「そっか。ならこれについて調べてみたら?」

 首を回しながら答えると、カリナが大き目の丸い塊を放ってくる。

「あ、そうか。『クルミ』」

「そうそう。この間も言ったけど、

木の実だけを使ったタルトがあったはずなのよ」

 硬い殻に覆われた実をキャッチして翳しなるほど、

と大きく頷いていると、カリナが微笑む。

「それってタルトで調べたほうがいいですか? それとも『クルミ』?」

 何しろ小さいうえに重い辞典だけにその情報量も膨大だ。

どこからどのように調べたらいいのか少しばかり迷ってしまう。

「そうねぇ……。案外タルトのほうが早いかも」

 材料で調べるよりもお菓子の種類で調べたほうが早いわよ、

と提案してくれるカリナを前に、アローナはそうか、と呟いた。

「わかりました。探してみます」

「うん。頑張って」

「はい」

 激を飛ばしてくるカリナにガッツポーズして、

さっそく辞典を広げる。

タルトの欄を端から順番に辿っていくがなかなか目当てのものは

見つからない。

 ページをめくること数分がたった。

「あ!」

 アローナは【タルトノア】と書かれた項目を前に目を見開いた。










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