スイーツ娘、村へ帰る。



第一章

1−4



 クロナは病弱な弟の邪魔になってはいけないと、

隣村からアローナの家へとやってきた言わば居候である。

日々の暮らしはアローナが村から貰っている遺族年金のほか、

クロナの両親からの生活費で賄っているのだが。

(帰ろうと思えばいつ帰っても構わないはずなのよね……)

 まあ、クロナの両親にもいろいろあるということだろう。

その点に関してアローナはクロナに口出ししたことはない。

(まあ、話したくなったら話すだろうしねー)

 胸の内で呟きながらノートを捲る。

 3つ年下の彼には確固たるお嫁さん像があるらしく、

いつも部屋に籠ってはまだ見ぬその人宛てに

手紙を書き綴っているらしい。

アローナは栞の挟んである場所を探し当てると、

声に出して読んでみた。

「えーっと、何なに? 『その髪は……』と……」

 少し大げさに詩を口にするが、クロナが出てくることはなかった。










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