スイーツ娘、村へ帰る。
第五章
3
「それはそうとクロナはどこに?」
話を本題に転換させると、イルミラが手をとってきた。
「こちらですわ。
この日のために外にかまどを2つ用意させたんですの」
わざわざ作らせたのか。
正直驚いたが、歩きだしながらイルミラが茶目っ気の含んだ
瞳を向けてくるので、アローナは内心の叫びを押し殺した。
「それはありがたいわ。審査員は誰?」
さらりと流して辺りを見回すと、かまどへ向かい歩きながら、
イルミラが空いたほうの手で指を折る。
「わたくしの両親とカリナさん、それから八百屋のおば様ですわ」
「イルミラは審査員にならなかったの?」
いつもなら絶対にやりたがるだろうに。
不思議に思って尋ねると、振り向いたイルミラが舌をだした。
「わたくしは審判ですから」
「なるほど」
公正でない、などと思ったのだろうか。
(こういう優しいところがかわいいんだろうなあ)
自分にはない少女らしい発想をするイルミラを前に感嘆していると、
何も知らないイルミラがええ、と首肯して
前方に見えた黒髪の少年へ手を振った。
「クロナ様! クロナ様!」
イルミラから名を呼ばれ、かまどと簡易に作られたキッチンで
下を向いていたらしいクロナが顔をあげた。
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