スイーツ娘、村へ帰る。



第六章





(手が滑る……)

 気をつけようと思えば思うほど、

掌に汗をかいているせいでバランスが取りにくい。

(落ちつけ……)

 アローナは内心で何度も念じながら審査員の前へタルトを置いていく。

審査員の3人は一様にタルトをじっくりと検分したのち、

フォークを入れた。

そのまま優雅な動作で口に含む。 次の瞬間、審査員たちが口々に叫んだ。

「まあ!」

「おお!」

「おいしい!」

 アローナは3人の一言で天にも昇るような気持ちになる。

頬を上気させていると、イルフォードが口火を切った。

「これは、我々が想像した以上に新しい味だ」

「ええ。この甘くて柔らかく、少し苦い実はなんと言うの?」

 涙を滲む瞳で問いかけてきたイルーナに、アローナは答える。

「『クルミ』と言います。

カリナさんのお店にあったのを分けていただいたんです」

「そうなの。このクルミと、それからアーモンドやピスタチオの

混じったキャラメル生地がなんとも言えない口当たりだわ!」

 イルーナが歓喜わまったような声をあげ、カリナが深く頷く。

「外のタルト生地もさっくりしていて食べていて楽しいです」

「うむ」

 カリナの言葉に同意しつつ、イルフォードが腕を組んだ。










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