スイーツ娘、村へ帰る。
第六章
4
審査員による試食の後、彼ら協議に入った。
落ちつかない気持ちで待つそのうちに、紙がイルミラへと渡される。
紙を受け取ったイルミラが、
しばし無言でそれを見つめた後声を張りあげた。
「それでは優勝者発表させていただきます! 優勝したのは……」
そこまで告げて言葉を切る。
固唾を呑んで見守っていると、一つ大きく息を吐き名を紡いだ。
「アローナさんです!」
途端に歓声がわき起こった。
アローナは拍手に送り出されながらイルミラの横へ並ぶ。
「大変おいしかったよ。これからも精進してくれたまえ」
「はい! ありがとうございます!」
花束とともに手を差し出してくるイルフォードと笑顔で
握手を交わしていると、イルミラがさらに声を張った。
「それでは、勝負を終えたお2人にさらなる発展があることをお祈りしつつ、
互いの健闘を讃えるため両者握手を!」
感情が高ぶっているのだろうか。
少し涙声で発せられたイルミラの言葉に従い、
アローナはクロナへ近づく。
「クロナ! クロナのお菓子、とってもおいしそうだったわ!」
握手を求めて手を伸ばすと、クロナが口惜しげに唇を噛んだ。
「くっ!」
クロナが拳を握り締め、踵を返す。
「え!」
驚きのあまり惚けている内に、クロナが走り去ってしまった。
「クロナさま!」
イルミラが慌てて追いかける。
「クロナ! 待って、クロナ!」
アローナは貰った花束をテーブルへ置くと、急ぎ後を追った。
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