スイーツ娘、村へ帰る。



第六章





 審査員による試食の後、彼ら協議に入った。

落ちつかない気持ちで待つそのうちに、紙がイルミラへと渡される。

紙を受け取ったイルミラが、

しばし無言でそれを見つめた後声を張りあげた。

「それでは優勝者発表させていただきます! 優勝したのは……」

 そこまで告げて言葉を切る。

固唾を呑んで見守っていると、一つ大きく息を吐き名を紡いだ。

「アローナさんです!」

 途端に歓声がわき起こった。

アローナは拍手に送り出されながらイルミラの横へ並ぶ。

「大変おいしかったよ。これからも精進してくれたまえ」

「はい! ありがとうございます!」

 花束とともに手を差し出してくるイルフォードと笑顔で

握手を交わしていると、イルミラがさらに声を張った。

「それでは、勝負を終えたお2人にさらなる発展があることをお祈りしつつ、

互いの健闘を讃えるため両者握手を!」

 感情が高ぶっているのだろうか。

少し涙声で発せられたイルミラの言葉に従い、

アローナはクロナへ近づく。

「クロナ! クロナのお菓子、とってもおいしそうだったわ!」

 握手を求めて手を伸ばすと、クロナが口惜しげに唇を噛んだ。

「くっ!」

 クロナが拳を握り締め、踵を返す。

「え!」

 驚きのあまり惚けている内に、クロナが走り去ってしまった。

「クロナさま!」

 イルミラが慌てて追いかける。

「クロナ! 待って、クロナ!」

 アローナは貰った花束をテーブルへ置くと、急ぎ後を追った。










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