スイーツ娘、村へ帰る。
第六章
5
アローナはクロナとイルミラの背中を追い、
屋敷の右奥へと入っていった。
走ることしばし、唐突にイルミラが立ち止まったので、
ゆっくり彼女へ近づく。
肩で息をしているイルミラのさらに奥にある木陰で、
クロナが息を切らして佇んでいた。
アローナはおもむろにクロナのそばへ行き、そっと声をかける。
「まだ、怒ってる、のよね?」
確かめるように問いかけると、クロナが激しく首を横へ振った。
「違うちがう! そうじゃないよ!」
どん、と木を叩き、クロナが叫ぶ。
「勝てると思ったんだ! 僕はいつもアローナを見てきたし、
アローナの作った物を味見してきたんだからって。
でも、わかったんだ。今の僕じゃアローナには敵わないんだって!」
うなだれるクロナをイルミラが宥める。
「そんなことありませんわ!
クロナさまのお菓子だって本当においしそうでしたもの!」
イルミラの言葉にアローナも同意した。
「そうよ、クロナ。あんたのお菓子、とってもおいしそうだったわ。
それにあたしこそ、クロナがいるから無茶できるんだって心底思ったもの」
声を大にして告げると、クロナがゆるゆると顔を上げた。
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