スイーツ娘、村へ帰る。



第六章





 アローナはクロナとイルミラの背中を追い、

屋敷の右奥へと入っていった。

走ることしばし、唐突にイルミラが立ち止まったので、

ゆっくり彼女へ近づく。

肩で息をしているイルミラのさらに奥にある木陰で、

クロナが息を切らして佇んでいた。

アローナはおもむろにクロナのそばへ行き、そっと声をかける。

「まだ、怒ってる、のよね?」

 確かめるように問いかけると、クロナが激しく首を横へ振った。

「違うちがう! そうじゃないよ!」

 どん、と木を叩き、クロナが叫ぶ。

「勝てると思ったんだ! 僕はいつもアローナを見てきたし、

アローナの作った物を味見してきたんだからって。

でも、わかったんだ。今の僕じゃアローナには敵わないんだって!」

 うなだれるクロナをイルミラが宥める。

「そんなことありませんわ! 

クロナさまのお菓子だって本当においしそうでしたもの!」

 イルミラの言葉にアローナも同意した。

「そうよ、クロナ。あんたのお菓子、とってもおいしそうだったわ。

それにあたしこそ、クロナがいるから無茶できるんだって心底思ったもの」

 声を大にして告げると、クロナがゆるゆると顔を上げた。










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