スイーツ娘、村へ帰る。
第六章
7
「ふんふふんふんふんふーん」
アローナは鼻歌混じりに生地をかき混ぜた。
クロナとの勝負から数日経った今日、
アローナはミルクレープに挑戦中である。
「クレープ生地ってこれくらい緩くて大丈夫なのかしら?」
少し疑問に思いながらもフライパンへ生地を流し込み、円を描く。
「薄く、丸く……」
手早く慎重に焼いては皿に置き、また生地を作り続けた。
「これくらいでいいかしら?」
ボールが空になるまで焼いてふと息を吐く。
それから、一枚ずつ皿に置きホイップした生クリームを
塗っては生地を重ねていった。
「仕上げはこれこれ」
アプリコットのジャムをできたケーキの上へ塗り、遠くから眺めてみる。
「結構いいんじゃない?」
満足して呟き、少しだけ切って口に入れた。
「おいしい!」
思ったとおりのできに微笑んで廊下へでる。
「クロナ! クロナー!」
自室にいるだろうクロナを呼ぶがなかなか降りてこない。
「もう、何してるのかしら?」
せっかく上手くできたのに。
少し拗ねた気分で台所へ戻ると、お勝手からノック音が響いた。
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