スイーツ娘、村へ帰る。
第一章
1−6
「クロナ様はどこにいらっしゃるんですの?
ぜひ私のオレンジジュースを飲んでいただきたいんですの」
イルミラの問いにアローナは肩を竦ませる。
「それが、どこにいるかさっぱりわからなくって」
本当はもしかしたら、という所があるにはあるのだが、
かなり面倒なのでできるなら言いたくはなかった。
第一、お菓子作りを中断するなんて冗談じゃない。
せっかくもうすぐできるのだから。
ふと吐息していると、イルミラが首をかしげてきた。
「お家の中をお捜ししてもよろしくって?」
どうしても諦めきれないのだろう。
許可を求めてくるイルミラを前にアローナは腕を組む。
「うーん。いいけど。家の中にはいないと思うわよ?」
さっき捜したのでそれは間違いないのだが。
やんわりと忠告してみたのだが、イルミラには伝わらなかったらしい。
がしっと手を掴み瞳を潤ませてきた。
「お願いいたしますわ!」
懇願してくるイルミラへ内心で溜め息をつきながら、
アローナは頷いた。
「わかったわ。その方があたしも助かるし」
よく考えたら渡りに船かもしれない。
どちらにしろクッキーの試食をしてもらうつもりだったのだから。
アローナは喜びを隠さずぶんぶんと手を振ってくるイルミラを前に、
くすりと微笑んだ。
一つ前を読む 小説の部屋へ戻る 次を読む
|