スイーツ娘、村へ帰る。
第六章
8
「カリナさん!」
扉を開けると、深緑色の実をカゴいっぱいに持ったカリナが立っていた。
「こんにちは。今いい?」
「あ、はい。もちろん大丈夫ですよ」
口角をあげて答えると、カリナがカゴから深緑色の実を1つ手に取る。
「これ、食べてみてほしいの」
「何かの実ですか?」
手に取ると思ったよりふにふにしていた。
馴染みのない感触に困惑しつつ首をかしげると、
カリナが得意げに説明を始める。
「アボカドっていうのよ。実の中は柔らかくてね。
ボイルした海老と混ぜ合わせるといい味見がするのよ。
レモンを入れるのがコツなんだけどね」
「海老ですか?」
アローナはいまいち完成図が想像できず瞬きを繰り返した。
「そう。ない場合はそのままでサラダにしてもおいしいわよ」
カリナの言葉に、アローナは慌ててかぶりを振る。
「いえ、実はあるんですよ。さっきイルミラが分けてくれて」
珍しい海老が手に入った、とイルミラが朝早くに持ってきてくれたのだ。
彼女が言うにはエビフライにするのがいいらしいが。
アボカドにも合うだろうかと考えていると、カリナが手を打った。
「ならちょうどいいわ! いくつか渡すからぜひ食べてみて!」
さらに2つほど渡してくれるカリナへアローナは口元を綻ばせる。
「ありがとうございます。さっそく試させてもらいますね」
「ええ」
感想を聞かせてね、と言い置き去って行ったカリナの
後ろ姿を見送り、アローナは勝手口を閉めた。
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