スイーツ娘、村へ帰る。
第一章
1−9
「何よ。いるならちゃんと出てきなさいよ」
小さなイルミラにぶらさがられたままのクロナを前に、
アローナは手を腰にあててみせる。
「ひどいよ、アローナ! 僕のポエム読んじゃうなんて!」
涙を溜めて非難してくるクロナへ対し、アローナは目を瞬いた。
「しかたないじゃない。そこにあったんだもん」
当然だ、と胸をそらせてみせると、クロナが吠えてきた。
「横暴だ!」
「あんたがいないのが悪いんじゃない。
それにちょっと読んだだけよ。身内なんだしいいじゃない」
「親しき仲にも礼儀ありだろ!
プライベートを大事にしない人間は最低だよ!」
イルミラに抱きつかれたまま地団駄を踏むクロナに構わず、
アローナはまあまあ、とクッキーを手に取る。
「それよりこれ食べてみてよ、ほら!」
クッキーを見せびらかすと、クロナが露骨に眉根を寄せた。
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