卵のつがい
第一章
1−16
フィットたち親子と別れてから数週間が経つ。その間いくつかの村
を通過し、最後の村を出てから数日が経った。そろそろ目的地の森を
守っているというアラバの村へ到着してもいいはずだろう。疲労が抜
けきらない足を引きずるように歩いていると、隣を歩くエポックが何
かを思い出したかのように口を開いた。
「そういえばよー。いつだったか、薬草店の子供が言ってたけどお前
の彼氏は動物を治せるのか?」
「何よ急に……。それにイースは彼氏じゃないってば、何度言ったら
わかるのよ」
律儀に否定する自分もどうかと思うが、ことあるごとに彼氏と言っ
てくるエポックに呆れる。
(でもどうしてあたしも敏感に反応しちゃうのかしら?)
エポックの言葉など無視してしまえばいいだけのことなのにそれが
できない。ミラは内心で首を傾げた。
「ん? ああ、そうだったな。悪いわるい。んで、どうなんだよ?」
エポックは悪びれもせず、それどころかこちらの反応など気にした
ふうでもなく続きを促してくる。ミラは肩を竦め、ため息を吐きなが
ら説明を口にした。
一つ前を読む 小説の部屋へ戻る 次を読む
|