卵のつがい
第一章
1−17
「イースは人間のお医師様になる勉強をしてるのよ。だから動物も治
せたんじゃない? と言っても彼もモモンガを飼っていたからフィッ
ト君のモモンガを治療できたらしいんだけどね」
以前手紙にそんなようなことが書かれていたことを思い出す。あれ
は怪我をしているモモンガを見つけて悩んでいた頃だった。『ハゴソ
ウ』という薬草が効くかもしれないとわかり、いてもたってもいられ
ず、アルノーの薬草店を尋ねたのだ。
(あのときが初めてだったのよね。アルノーさんの薬草店へ行ったの)
「へえ、すごいんだな。あ、だから薬草が土産なのか。色気もへった
くれもねー土産だなーって思ってたんだがなるほどな」
聞こえてきた暴言に、ミラは眉間にしわを寄せる。
「色気がないって何よ! お土産に色気なんか必要ないでしょうが!」
別段、自慢できるような女らしさを持っているわけではないが、他
人から指摘されるのと自覚するのとでは雲泥の差がある。ミラはキッ
と、エポックを睨みつけながら、責め立てた。
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